Classici giapponesi con furigana
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しのこうかい
死の航海
国枝 史郎
Leggi 死の航海 (しのこうかい) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8634 caratteri · 18 schermate
二
小さい包を小脇に介え丈夫そうな杖に体を支えて辛うじて立っているらしい。病弱と老衰と空腹と――空腹と云えば、老人は、今日で三日というものは麺麭一片さえ食ってはいない。老人の腹の中にあるものは道々飲んだ水ばかりだ。この浅間敷い老人の姿――空腹と老衰と病弱とに虫喰まれている老人の姿を、誰が今日見たところで、その老人が往昔、逞しい体の所有者で、そして素晴らしい好男子で、しかも大変な道楽者の若い水夫であったなどとは、どうしたって思われないに相違ない。それほど老人の肉体は不健康に萎び切っているのであった。
二
「一晩厄介になりたいがね」
合宿所の玄関の横手にある計算台の前に立って老人はおずおず斯う云った。
「ナニ厄介になりたいって?」
計算台を前にして腰掛けていた中老が突慳貪に訊き返えした。
「ここは水夫の合宿所で木賃宿じゃないんだぜ。一晩厄介になりたいんなら木賃宿へ行って頼むがいい」
すると老人は萎びた顔へ颯と血の色を浮かべたが、思い返えして穏しい声で、
「此処が合宿所だっていうことは私も承知して居りますので……それに私も斯う見えても元は矢張水夫でして……」
「お前も元は水夫だって? そうして今は何んなんだい?」