Classici giapponesi con furigana
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ははのじょうきょう
母の上京
Leggi 母の上京 (ははのじょうきょう) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.655 caratteri · 33 schermate
思念どころか呂律すらもすでにないので、ヒロシも観念して、たゞ影の形に添ふ如く悄々とついてくる。姐さん連がまさかに内実は御婦人と知る由もなく色目を使ふと、益々武士の娘の如くに凜々と悲しみを深めてゐる。女は御酒はいたゞきませぬ、と自ら言ふ通り、ヒロシは一滴も飲まない。うけた杯はなめるだけで、盃洗へあけて返すのである。
どこで、どうして関取に別れたか、夏川はもう記憶になかつた。たぶん上野をめざして歩いてゐたのであらう。彼は浮浪児だ、浮浪児だと叫んで歩いてゐた。うしろに右にからまるやうにヒロシが歩いてゐた。アヽ、ちよつと、浮浪児さん、とよびとめて四五人の男がとりまいてゐた。
「あゝ、さうか、街のにいさんか」
「ヘッヘ。おてまはとらせませんよ。ちよつと焼跡の方へ来ていたゞきませう」
「あゝ、いゝとも。なんでもやらあ」
ひどく気前がいゝ。彼もヒロシも元々持合せがないのである。そこでヨタ者どもは二人の着衣をぬがせた。
「あゝ、いゝとも。どうせこれからは長い夏がくらあ。こんなものは邪魔つけだ。綺麗サッパリ持つて行つてくれ。アヽ、いゝ気持だ。ナニ、もうないよ、あとは身体ばかりだ。