Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Leggi 水郷異聞 (すいごういぶん) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.516 caratteri · 36 schermate

Aozora Bunko

月の光の工合であろうか舟の周囲は強い電燈を点けたように明るくなって、女の縦模様のついた錦紗のような華美な羽織がうすい紫の焔となって見えた。

「私がかわりましょうか、女の方よりも、すこし力があるのですよ」

省三は眩しいような女の白い顔を見て云った。女はそれを艶やかな笑顔で受けた。

「いえ、私はこのボートで、毎日お転婆してますから、楊枝を使うほどにも思いませんわ」

「そうですか、では、見ておりましょうか」

「四辺の景色を御覧くださいましよ、湖の上は何時見ても好いものでございますよ」

女は左の方へちょっと眼をやった。省三も女の顔をやった方へ眼をやろうとしてすぐ傍の水の上に眼を落してから驚いた。その周囲の水の上は真黒な魚の頭で埋まって見えた。それは公園や社寺の池に麩を投げたときに集まってくる鯉の趣に似ているが、その多さは比べものにならなかった。魚は仲間同士で抱きあったり縺れあったりするように、水をびちゃびちゃと云わして体を搦ましあった。

「鯉でしょうか」

省三は眼をった。

「そんなに騒ぐものじゃありませんよ、静になさいよ、お客さんがびっくりなさるじゃありませんか」

女は魚の方を見てたしなめるように云った。