Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどのかじゅつ

江戸の火術

野村 胡堂

Leggi 江戸の火術 (えどのかじゅつ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.929 caratteri · 36 schermate

Aozora Bunko

「返せッ、それは金目の品ではない、――返さないと、己れッ、手裏剣が飛ぶぞ」

半十郎は駆け乍ら、小柄を抜いてサッと振りあげました。曲者との距離は僅かに二十歩、あと五六歩詰めさえすれば、間違いもなく首筋が縫えるでしょう。

早くもその気勢を察した曲者は、中腰に身を屈めると、サッと右手へ切れました。其処から木立の入口まで、身の丈け程の恰好な藪が続いて、手裏剣を防いでくれるのでした。

「あッ」

一瞬、曲者の姿は見えなくなりました。大地を嘗めるように、木立の中へ躍り込んだのです。

続く井上半十郎、今度曲者の姿を見掛けたら、遠慮もなくその手裏剣を飛ばす積り、突き詰めた心持で、ツと木立の中へ――。

が、木立は思いの外浅く、飛込んだ半十郎の前には、広々と明るい道が開けて、其処には若い女が一人、嫣然、半十郎を迎えるように立って居るではありませんか。

曲者は? ――と見ると、ほんの五六間先へ、頭を先へ押っ立てて、両手で梶を取るように、死物狂いで逃げて行くのです。

「己れッ」

振り上げた手裏剣は――不思議、宙に押えられました。

「お待ちなさいまし、お入要の品はこれでしょう」

若い女は見覚えある振り分けの荷物を、半十郎の眼の前へ差出したのです。