Classici giapponesi con furigana
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おんしつのこい
温室の恋
国枝 史郎
Leggi 温室の恋 (おんしつのこい) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.010 caratteri · 22 schermate
二
私は曾て或新聞の劇評記者をしたこともあって芝居の楽屋へも宜く這入り、扇雀だの福助だの千代之助だのの秀麗な俳優達の素顔なども珍らしからず見ているが、其時の青年に比べると姿なり容貌なり及びもつかぬ。無駄な形容は止めることにしよう。却って其美を傷付けるようなものだ。其青年を眺めた時、卒然と私の思い出したのはワイルドの描いたドリアングレーの事で、日本のワイルドたる魔派詩人の谷崎潤一郎氏にでも見せたなら何んなに随喜することだろう――そんな事をさえ思ったものである。
と、お寿賀さんが私に云った。
「この方、貴郎を待っていらしったのよ。ええもう今から二時間も前から……貴郎この方知っていらっしゃるでしょう。往来でちょいちょいお逢いした筈ですよ」
二
そう云われて私は気が付いたのだが、成程その青年とは行き合っている。しかも三回ほど行き逢っている。それも三回とも「謎の女」と連立っていたように思われる。
現実主義の私としては「謎の女」などというそういう言葉には、一向同情が無い筈であるのに其女だけには其言葉が莫迦にしっくり宛て篏っているので、町の人達と同じようについ私も其言葉を使うのであった。