Classici giapponesi con furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Leggi 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 57.666 caratteri · 114 schermate
此努力が彼等の一生で、其外には何物もない。
円タクの運転手もまた現代人の中の一人である。それ故わたくしは赤電車がなくなって、家に帰るため円タクに乗ろうとするに臨んでは、漠然たる恐怖を感じないわけには行かない。成るべく現代的優越の感を抱いていないように見える運転手を捜さなければならない。必要もないのに、先へ行く車を追越そうとする意気込の無さそうに見える運転手を捜さなければならない。若しこれを怠るならばわたくしの名は忽翌日の新聞紙上に交通禍の犠牲者として書立てられるであろう。
* * *
窓の外に聞える人の話声と箒の音とに、わたくしはいつもより朝早く眼をさました。臥床の中から手を伸して枕もとに近い窓の幕を片よせると、朝日の光が軒を蔽う椎の茂みにさしこみ、垣根際に立っている柿の木の、取残された柿の実を一層色濃く照している。箒の音と人の声とは隣の女中とわたくしの家の女中とが垣根越しに話をしながら、それぞれ庭の落葉を掃いているのであった。乾いた木の葉の々としてひびきを立てる音が、いつもより耳元ちかく聞えたのは、両方の庭を埋めた落葉が、両方ともに一度に掃き寄せられるためであった。