Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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むめいさっかのにっき

無名作家の日記

菊池 寛

Leggi 無名作家の日記 (むめいさっかのにっき) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.441 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

俺はすぐ返事を書いた。あまり興奮してあいつに笑われはしまいかと思われるほど、興奮にみち感激にみちた手紙を書いた。そしてすぐ後から作品を送ることをいい添えた。俺の手紙は、明らかに卑しい哀願の調子を交えていた。俺は自分の態度のうちに征服された弱者が、強者におもねっているような、さもしい態度を感づいた。今まで、極端に呪詛していた彼の、華々しい初舞台に対してさえ、賞賛の言葉を連ねた。が、俺にはそれを卑しむべきこととして思いとどまりうるほどの余裕はなかったのだ。山野の好意にすがることは、現在の俺にとっては唯一の機会だといってもよかったのだ。

俺は手紙を出した後で、すぐ中田博士を訪問した。俺の脚本の「夜の脅威」を貰いに行ったのだ。博士のところへ持って行ってから、もう三カ月以上になる。博士はもうとっくに、俺の脚本のことなどは忘れてしまったと見え、たまたま俺に言葉を掛けることなどがあっても、脚本のことはおくびにも出さなかった。が、今度山野のところへ作品を送るとしても、いちばんまとまっているものは「夜の脅威」であった。考えてみれば、俺は発表のことばかりに気を取られて、本質的の創作にはまったく呑気であったのだ。