Classici giapponesi con furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Leggi 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.705 caratteri · 173 schermate
いつかも、負傷の子猿を伴れた親猿が、この近所の木に棲んで、何日もお湯へはいっていたという里の人のはなしだった。だから、いつのころからともなく猿の湯と呼び慣らわしてきたのだとのこと。それで、お猿が入浴っている時は、人間は遠慮して、できるだけ邪魔をしないのだそうな。」
と思い出した千浪は、今にも猿が来はしまいかと、急に恐ろしくなって、いそいで湯壺を出た。
人の見る眼はないが、むすめ十九、裸身を屈ませて小走りに、素早く岩かげへ廻ると、何の設備もないとは言え、女性の浴客のために建てられたささやかな脱衣場がある――竹を立て、莚をめぐらしたほんの掘立小屋。
ここへはいって、すぐ大きな矢羽の着物に帯を廻した千浪は、
「まあ、いつの間にか、こんなに暗くなってしまって。ほんとに、わたしとしたことが気の強い。さぞお父様や大次郎さまが御心配のことでしょう。」
七月の初めではあるが、山は、夏を知らない。生乾きの脛に袷の裾をさばいて、うねうねとした黒土の小道を、上の森陰の部落をさしていっさんに上って行った。
剣を取って江戸を風靡する弓削法外先生のひとり娘である。夜みちを怖いとは思わないが――。