Classici giapponesi con furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Leggi 真珠夫人 (しんじゅふじん) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 289.296 caratteri · 578 schermate
七
が、口の中では、美奈子の慎ましさや美しさに対する讃美の言葉を、噛み潰したのに違いなかった。
美奈子は、青年が此の次に、何を言い出すかと云う期待で、身体全体が焼けるようであった。心が波濤のように動揺した。小説で読んだ若い男女の恋の場が、熱病患者の見る幻覚のように、頭の中に頻りに浮んで来た。
が、美奈子のもしやと云う期待を裏切るように、青年は黙っていた。月の光に透いて見える白い頬が、やゝ興奮しているようには見えるけれども、美奈子の半分も熱していないことは明かだった。
美奈子も裏切られたように、かすかな失望を感じながら、黙ってしまった。
沈黙が五分ばかりも続いた。
「もう、そろ/\帰りましょうか。まるで秋のような冷気を感じますね。着物が、しっとりして来たような気がします。」
青年は、そう言いながら欄干を離れた。青年の態度は、平生の通りだった。優しいけれども、冷静だった。
美奈子は夢から覚めたように、続いて欄干を離れた。自分だけが、興奮したことが、恥しくて堪らなかった。自分の独合点の興奮を、相手が気付かなかったかと思うと、恥しさで地の中へでも隠れたいような気がした。