Classici giapponesi con furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Leggi 真珠夫人 (しんじゅふじん) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 289.296 caratteri · 578 schermate
青年は、そう云いながら立ち上った。が、あまり興奮した為だろう、彼は、眼が眩んだように、よろめいた。
紳士は、周章て、青年の身体を支えた。
「いや、あまりに興奮なさっては困りますよ。お心を落着けて、気を静めて!」
が、青年はそれを振切った。
「いや、捨てゝ置いて下さい! 大丈夫です、大丈夫です!」
そう云いながら、青年は廊下へよろめきながら出た。『大丈夫です!』と、口では云ったものの、彼はもう決して、大丈夫ではなかった。
彼の頭の中には、激情の嵐が吹き荒れた。怒と恨との洪水が漲った。理性の燈火は、もうふッつりと消えてしまっていた。
「兄を弄んだ上に、この俺を!」
そう思うと、彼の全身の血は、怒のためにぐん/\と煮え返った。
「兄を弄んで間接に、殺して置きながら、まだ二月と経たない今、この俺を! 箱根まで誘い出して、謂われのない恥辱を与える!」
そう考えると、彼の頭の裡は、燃えた。身体中の筋肉が、異様に痙攣した。
もう世の中の他の凡ては、彼の頭から消え去った。国家も社会も法律も、父も母も妹も、恐怖も羞恥も、愛も同情も。たゞ恐ろしい憎み丈が残った。その憎みは、爆発薬のような烈しさで、彼の胸の裡を縦横にのたうった。