Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
……ひとつ腹から出た妹ながら、ひとの数奇のおもしろさよ、武門正成のうちからも、ひと粒の胚子が、あらぬ野の土にこぼれて、行くすえ、どんな花を世に咲かすことであろうか……などとも思われて」
夜は深かった。
千早川の渓水の音だけが、どこかに遠く――
「卯木……。そうだったな」
正成はなお、妹の方へ、その柔らかな目をそそいで。
「ちがうか。……この兄はそちたち夫婦の願望をそう観ていたが、思いすぎか」
「でも、あれからの世の騒がしさ、私どもの願いなどは、どこにも置くところはございませんでした」
「げに一ト頃は、この水分ノ館さえ焼き払い、千早の孤塁に冬をすごし、草を喰べ、よくぞ生きてきたものよ。しかも、その籠城中に、そなたは観世丸を産んでいた」
「…………」
「可愛くなったのう。その観世丸と申す名も、そなたと治郎左とが長谷へ詣って、いただいて来た童名じゃそうな。――自分一代は、乱麻の世に会うてぜひもないが、この子だけは、芸能のみちに名をあらわすほどな者になし給え、修羅殺伐な六道の外に立つ者となさしめ給えと、親心、祈願の夜籠りまでしてもどったとか……そのおり久子から又聞きに聞いてもいた」