Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate
「そなたは幾人も生み育てたが、卯木はこれまで二人も亡くしているそうだ。大事にしてやってくれい」
その卯木の良人服部治郎左衛門は、ほかの者と共にやや離れた所にひざまずいていたが、そう聞くと、あからめていた顔に一そうな充血を見せて、その面へ曲げた肱を当てていた。
「ここの旗、ここの砦、何は失うとも、守りぬかねばならぬ第一は子どもだからな。大人どもはついこんな乱麻を世に起してしまったが、さりとて、これぎりの世でもない。戦も、次の生命の芽ぶきに望みをかけていればこそ戦えるようなものだ。……多聞丸、三郎丸、みなその芽ぶきだ」
なにかもっとお夫婦だけの深い話もあるにちがいない。と察して、爺の左近は、そこらの者へ眼くばせした。そして、そっと一同でほかへ去った。
ただ二人きりになると、久子は急に胸のなだれを覚えた。良人のそばへ無意識にずり寄って、板縁についている良人の手のうえに、自分の手をそっとかさねて唾をのんだ。良人のそれは革の籠手だし、彼女のも百姓女房のように荒れている手ではあったが、あたたかな手頸の脈と脈が結んでいた。……そしてしばらくは、彼女も正成も、眸をよそに、小鳥の声の中にいた。