Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate

Aozora Bunko

「大蔵、鳥部野へ出るな、こうまいると」

「さようで」

「このあたりは?」

「羅刹谷とかいいますよ」

「羅刹谷」

「名は不気味ですが、ながめは佳い。洛内はひと目ですから」

「ちょっと降りよう」

「また、鞍尻がお痛くなって来ましたか」

「なにせい、年をとると、尻の肉がうすくなってな、怺えがないわ」

自嘲しながら、時親はもう牛の背から降りていた。

岩つつじの間に、二人は腰をおろした。しばらくは眼を、西の京から東の京へ、また加茂川や丹波ざかいの山波へまでさまよわせる。

「なるほど、都の顔は、焼けあとだらけだ。いちど赤松勢が攻め入って、六波羅もあぶなかったという噂は噂以上だわえ」

大蔵はつぶやいた。けれど、黙りこくっている時親の横顔をちらとのぞいて、彼もそれきり黙りこんだ。

途々にも聞いている――

桂川をやぶって赤松勢がなだれこんだ合戦の日には、洛内数十ヵ所から兵火がもえあがり、新帝(光厳天皇)の宮居もあやうくみえたほどなので、後堀川の大納言、三条の源大納言、鷲ノ尾中納言、坊城の宰相ら、おびただしい月卿雲客のあわてふためきが、主上をみくるまにお乗せして、黒煙のちまたを六波羅へと移しまいらせ、つづいては、院、法皇、東宮、みきさき、女房たちから梶井の二品親王までの――持明院統のかたがたすべても――りくぞくとして六波羅へ避難してきた。