Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate

Aozora Bunko

「……まいる途中、時鳥を聞きましたな。ことしの初時鳥、しかも朝時鳥を」

早暁の客は言った。

登子の実兄、北条守時、あの赤橋殿なのである。

彼の許へも、高時の令がつたえられていたにちがいない。

「台命により、妹の身をうけ取りに参上した」と、いま書院に坐ったばかりであった。

高氏は、卯ノ花に縅した黒革のつやつやしい具足、よろいを着込み、

「おそれ入る」

と、何度も詫びてはその人へ自嘲をみせた。

「おわらい下さい。妻を質に出さねば出陣も出来ません。世にこんな良人がありましょうか」

「いや、なくはない」

守時は静かに笑む。いつもこのような人ではあるが、今朝も事なげな姿であった。

「治承の世にも、木曾殿(義仲)がそうでしたろ。頼朝公に質子を求められ、巴御前との仲の一子を鎌倉へ送って、都入りを果たされた」

「…………」

高氏は守時の唇もとを見まもった。見ているだけでもおそろしかった。

ふとしたらこの人は、たれよりも深く、この高氏の胸を覗き知っているのではあるまいか。

もし、そうだとしたら?

高氏は畏敬と辛い同情をついこの人に禁じえない。妹の登子を自分へ嫁がせてよこした当初から、世評周囲のいろんなわずらわしさによく守時は耐えてくれた。