Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate
「てまえからはまだ何も申しあげておりませぬ。そのことは、ご舎弟さまのお口添えもなくてはかなわずと存じますので」
昼寝のあとのせいか、すこし顔は青味をたたえていた。しかし高氏は、右馬介を前にみると、
「やあ」
と、いかにも爽快らしくわれから言った。ほとんど主従のへだてなど取り除けている。
「右馬介、ついに待望の日を持ったな。世間ていの勘当も今は無用、晴れて帰参してくれい」
「もったいない仰せです」
「いや真情だ。傅人として、少年の日から世話をやかせ、あげくに十年、縁の下の辛苦をさせた。げに、そちならではだ」
高氏は、一領の鎧をそばにおいていた。用意しておいたものとみえ、
「帰参のしるしぞ」
と、彼に与えた。そしてなお、
「高氏はまだ上洛途上で、大望の成る成らぬは、一に天運にあるが、もし、こころざしを遂げえたあかつきには、右馬介、まず第一にそちの功をあげるであろうぞ」
とも誓った。
すると。右馬介は「いえ……」と、それへつよく固辞を見せた。その眉と、高氏の眼ざしとの間にふと、音の発しるような感情が露出していた。
高氏には、薄々わかっていたのである。――午睡に入るまえ、近侍の者からふと耳にしていたことなのだ。