Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate
「もっと打って!」
「うるさい」
「打ってッ」
「ちっ、どうなとなれ」
肉の音がした。地が哭いた。そして、地を抱いた彼女は、それでやっと、こころよい苦痛と、あふれ出る或る満足にちかいものにその泣きじゃくりを次第になだめられていた。――やがて、どこかで師直の声がし、また高氏が去るとわかっても、そうしていた。火みたいな頬のしびれを、手の中に抱えて、甘い痛みだけを、あたまの芯で追っていた。
やがて、彼女はたれかに抱きおこされていた。高氏でないことはもう知っていたのだろう。素直に起きあがり、そしてものもいわず、うなだれたまま、どこへともなく歩みだしていた。
「藤どの……」
呼ぶ声に、その後ろ姿は、初めて人がいるのを知ったようにふりむいた。
青い朝がいつか明るみかけている。自分の涙で濡らした大地のあとに、師直の影が、うッすら、歯をむいて笑っていた。
「よかった。……どうやらお心を取り直されたか」
「…………」
「一人の男に迷ぐらされるたび、いちいち狂乱していたら、女の一生は狂気のしどおしで送らにゃならぬ。こんな世にばかげていよう。しょせん女性にしても強く生き抜くしか生きようはおざるまいがの。