Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate
いつかは廉子が号泣して、とり乱す日が来るだろうとして、その日を見るのも彼女のひそかな愉楽でさえあったのだ。
ところが。
「どうしてぞ……?」
と、彼女自身ですら自身が腑がいなくなり出していた。
なによりの原因は、彼女の意志とはべつに、彼女の女のからだが、日にまし帝を愛しがって昼の間すら忘れがたい男になっていたからだった。
そのうえ年暮ごろから酸い物をこのみ、つわりを覚えるなど、あきらかに今年に入ってからは、身の受胎を知っていた小宰相なのだった。
「ちょうど今朝、髪を洗っておいて……」
よかったと、彼女は思う。
待ちかねた夕になると、彼女はその黒髪に香を焚き染めて、もういちど入念に化粧を凝し直していた。
「近うおざるが、ご案内にまいった。そろそろお立ち出でを」
やがて外で、迎えの兵の声がする。
彼女は被衣して、
「ご苦労ですね」
すぐ白い足に草履をはいた。
松の丘の西がわに、残照の影が美しい。東がわの湾は暮色を深くして、もう波音は夜の階音といっていい。
「もし」
登りかけて行く兵の背へ。
「すこしそのへんを巡ってみたい。ほかの妃たちの木の丸小屋はどこですか」
「あれに」