Classici giapponesi con furigana
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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
Leggi 秘境の日輪旗 (ひきょうのにちりんき) di 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 84.829 caratteri · 169 schermate
英夫はそろそろと、しずかに両腕を敷いて、楽に見られる姿勢をとった。
人かげは、前かがみに、しばらく左右にゆれていたかと思うと、突然、すっ! とかき消すように消えうせた。
消えうせた――のだ。
英夫は思わず目をこすった。たしかに、今まで見えていたものが、揮発油のシミのように蒸発してしまったのだ。
そんなはずがあるものか! すばやく裸足のまま床の上にとびおりると、かぎの手に曲った側を伝って、用心深く近づいて行った。
賄場には誰もいなかった。
食料品を入れておく、棚や、大きな冷蔵庫のほかには、体をかくす場所も見あたらない。――棚や冷蔵庫にひそんでいるとしても、たしかに鍵のかかっているところを見ると、窒息してしまうよりほかはないはずだった。
そのほか、ビール樽ほどの大きさの空樽や、がらくた道具しかおいてない一方の側をしらべて見たが、べつに扉らしいものもついていなかった。
若しかすると、夢を見ていたのではないかと思われるくらいだった。
しかし、決して夢ではない。証拠には、吊床――の上に戻ろうとした時、猛り狂う海鳴の音や、例の無気味なきしみ音を、はっきり身近に感ずることが出来た。