Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

Leggi 笑う悪魔 (わらうあくま) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.687 caratteri · 55 schermate

Aozora Bunko

その中から取出したカビネ型の一枚の写真に、花房一郎は目を見張りました。

「潮田春樹の写真ではないか」

千種十次郎は首を出します。

「何んだって、こんな写真が此処にあるんだろう?――おや、これを見給え千種君」

花房一郎はニンガリともせずに、写真を渡すのです。見ると写真の表面には、斑々として口紅の跡が――

「――――」

千種十次郎は、フト処女の心臓を覗いたような気がして、あわてて首を引込めました。熊谷財閥の令嬢奈々子が――あの冷たくて権高で此上もなく美しい奈々子が、寝室の小卓の抽斗の中に、口紅で染った男の写真――悧溌で忠実ではあるにしても、貧乏な腰弁の一青年の写真を忍ばせようとは、全く思いも寄らぬ大事件だったのです。

「秘密の緒口は此処にもあったわけだ」

花房一郎は、それを職業的に受取って、冷たい方程式の一つの項に書き入れた様子です。

「写真は元の通り抽斗へ返した方が宜いだろう」

千種十次郎はそれほど物を冷たくは考えられない様子でした。

「言う迄もない、そして滅多な人の見ないように、この抽斗の鍵は僕が預って置こうよ、奈々子さんが無事な姿を現わすまで――」

花房一郎は小さいニッケルの鍵を衣嚢に入れて、そっと寝室を離れました。