Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

Leggi 肌色の月 (はだいろのつき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 50.706 caratteri · 101 schermate

Aozora Bunko

湖心のあたりに二ヶ所ばかり深いところがあって、そこだけが青々とした水色になっていた。

湖のほとりで車を停めると、紳士がたずねた。

「泊るところはどこ? ついでだから送ってあげよう」

今夜の泊りなどは考えてもいなかったが、久美子は思いつきで、出まかせをいった。

「もう、ここで結構ですわ……キャンプ村のバンガローを借りて、今夜はそこで泊ります」

「バンガローの鍵を持っている管理人は、今日は吉田へ行っているはずだ。売店なんかもやっていないだろうし、生憎だったね」

久美子が弱ったような顔をしてみせると、そのひとはむやみに同情して、この辺には宿屋なんかないから、大室山の岩室ホテルへでも行くほかはなかろうと、おしえてくれた。

「ホテルになんか、とても……お金がないんです。ごらんのとおりの貧乏絵描きですから」

紳士はなにか考えていたが、

「そんなら、私の家へ来たまえ」

と、おしつけるようにいった。

「でも、それではあんまり……」

「なにもお世話はできないが、一晩ぐらいならお宿をしよう」

車をすこしあとへ戻して、林の中の道を湖の岸についてまわりこんで行く。

どれがどの技とも見わけられないほど、青葉若葉が重なった下に、眼のさめるような緑青色の岩蕗や羊歯が繁っている。