Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

Leggi 苦心の学友 (くしんのがくゆう) di 佐々木 邦 (ささきくに) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.732 caratteri · 332 schermate

Aozora Bunko

「きれいだなあ。お姉様はお上手だなあ」

と照彦様はさっそく刺繍台の方へはい進んだ。おとといの晩の不首尾があるから、特にご機嫌をとるつもりだった。

「さわっちゃいやよ」

「はいはい」

「照彦さんはなんでもすぐこわすからこわいわ」

「もう大丈夫ですよ。内藤君、見たまえ。芙蓉だ。これは花壇のを写生したんだぜ」

「きれいでございますなあ」

と正三君は遠方から伸びあがって拝見していた。

「きみ、飛行機じゃないよ」

「なぜですか」

「でも、きみは口をあいて見ているんだもの」

と照彦様は人前で正三君を冷やかすほどしたしくなっていた。

「内藤さん、この通りですから、照彦さんのお相手はお骨折りでしょう?」

と妙子様が同情しておっしゃった。

「どういたしまして」

と正三君はたった二、三日の中にこんなおとなびた言葉づかいをおぼえた。たいていの場合これで間に合わせる。

「照彦さんは茶目さんですからね」

「どういたしまして」

「内藤さんはなんでもよくおできになるそうですね?」

「どういたしまして」

「それに照彦なぞとちがっておとなしいんですから、ほんとうに申し分ございませんわ」

「どういたしまして」

「先生になってあげてください」