Classici giapponesi con furigana
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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
Leggi 荷風随筆集(下) (くさもみじ) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.512 caratteri · 63 schermate
三年たてば三田の学窓からも一人や二人秀才の現れないはずはない。とにかくそれまでの間に、森先生に御迷惑をかけるような失態を演じ出さないようにと思ってわたくしは毎週一、二回仏蘭西人某氏の家へ往って新着の新聞を読み、つとめて新しい風聞に接するようにしていた。三年の歳月は早くも過ぎ、いつか五年六年目となった。もともとわたくしは学ぶに常師というものがなかったから、独学固陋の譏は免れない。それにまた三田の出身者ではなく、外から飛入りの先生だから、そう長く腰を据えるのはよくないという考もあった。
わたくしの父は、生前文部省の役人で一時帝国大学にも関係があったので、わたくしは少年の頃から学閥の忌むべき事や、学派の軋轢の恐るべき事などを小耳に聞いて知っていた。しかしこれは勿論わたくしが三田を去った直接の原因ではない。わたくしの友人等は「あの男は生活にこまらないからいつでも勝手気儘な事をしているのだ」といってその時も皆これを笑った。谷崎君の批評にも正宗君の論文にもわたくしが衣食に追われていない事が言われている。これについてわたくしは何も言う事はない。唯一言したいのは、もしわたくしが父兄を養わなければならぬような境遇にあったなら、他分小説の如き遊戯の文字を弄ばなかったという事である。