Classici giapponesi con furigana
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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
Leggi 荷風随筆集(下) (くさもみじ) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.512 caratteri · 63 schermate
三月九日の火は、事によるとこの昔めいた坊主頭の年寄をも、廓と共に灰にしてしまったかも知れない。
栄子と共にその夜すみれの店で物を食べた踊子の中の一人はほどなく浅草を去って名古屋に、一人は札幌に行った話をきいた。栄子はその後万才なにがしの女房になって、廓外の路地にはいないような噂を耳にした。わたくしは栄子が父母と共にあの世へ行かず、娑婆に居残っている事を心から祈っている。
大道具の頭の外に、浅草では作曲家S氏とわたくしの作った歌劇『葛飾情話』演奏の際、ピアノをひいていた人も死んだそうである。その家は公園から田原町の方へ抜ける狭い横町であったがためだという話である。観客から贔屓の芸人に贈る薬玉や花環をつくる造花師が入谷に住んでいた。この人も三月九日の夜に死んだ。初め女房や娘と共に大通りへ逃げたが家の焼けるまでにはまだ間があろうと、取残した荷物を一ツなりとも多く持出そうと立戻ったなり返って来なかったという。
浅草公園はいつになったら昔の繁華にかえることができるのであろう。観音堂が一立斎広重の名所絵に見るような旧観に復する日は恐くもう来ないのかも知れない。