Classici giapponesi con furigana
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にじのはし
虹の橋
久生 十蘭
Leggi 虹の橋 (にじのはし) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.038 caratteri · 30 schermate
新憲法のおかげで、あらゆる前科が戸籍から抹消されたということを、あさひは知らなかったのである。
二十六年の暮、あさひは須磨明美という名で飛田大門通りの「よっちゃん」というキャバレーまがいのスタンドバアで働くことになった。特飲街の近くなので、毎夜のように喧嘩があり、環境は荒いが収入が多く、元今宮の南海鉄道の沿線に部屋をみつけて、翌年の夏ごろまでせっせと稼いだ。おなじ家に半年以上もネバったのはそのときがはじめてだったが、こんどは向うがつぶれた。マダムが短期(相場)でしくじって店を投げだし、そのあとがパチンコ屋になった。
雨後の夕凪で、昼間の暑気が淀みのこり、蒸し釜で蒸しあげられるような夜の九時すぎ、あさひがシュミーズひとつでぐったりしているところへ、店で芦原小夜子といっている北川千代が、スーツケースをさげてやってきた。組がちがうので、さほど親しくもしていないが、東京生れだというので、なんとなくたがいに気をひかれるといった程度の間柄だが、あさひのほんとうの名を知っているのは、店では千代だけだった。
「ちょっと、いいところじゃないの……さっそくだけど、二三日、置いてくれないかしら。