Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にじのはし

虹の橋

久生 十蘭

Leggi 虹の橋 (にじのはし) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.038 caratteri · 30 schermate

Aozora Bunko

いま部屋を開けわたして来たところなの」

「いいわよ……ひどい汗。話はあとにして、ともかく裸におなんなさいよ」

「大阪の夏って憂鬱ね……じゃ、裸になるわ」

千代はパンティだけになって、窓際の畳のうえに足を投げだすと、沈んだ顔つきで煙草に火をつけた。

「お店のせいばかりでもないけど、急に里心がついちゃって、東京へ帰ろうかなあって思っているところなの……真山さん、あなた大阪は、ことしで何年?」

「六年よ」

「そういえば、あたしも六年だわ」

「東京の住い、どちら」

「麻布の霞町……何代となく深川に住みついていたんですけど、あたしが大阪へ来た年、麻布へ越したのよ。六十二になる眼の見えない祖母が、たったひとりでひっそりと暮しているの」

「たいへんね」

「土地馴れない山の手なんかへ越して、ご近所の世話になって、カスカスに生きるのかと思うと、しみじみとしちゃう。このごろ、お祖母さんの夢を見たりすると、ドキッとすることがあるのよ」

「見てあげるひとはいないの」

「両親も兄弟も、親類みたいなのも、深川の空襲で、きれいさっぱりやられてしまったわ」

「たよりはしているの」

「このあいだ、近々に帰るって、手紙をだしたけど……」