Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
こうじん
行人
Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate
それで誰も傍にいない折を見計らって、母にどうかしてくれと頼んだ。
母は兄を大事にするだけあって、無論彼を心から愛していた。けれども長男という訳か、また気むずかしいというせいか、どこかに遠慮があるらしかった。ちょっとの事を注意するにしても、なるべく気に障らないように、始めから気を置いてかかった。そこへ行くと自分はまるで子供同様の待遇を母から受けていた。「二郎そんな法があるのかい」などと頭ごなしにやっつけられた。その代りまた兄以上に可愛がられもした。小遣などは兄にないしょでよく貰った覚がある。父の着物などもいつの間にか自分のに仕立直してある事は珍らしくなかった。こういう母の仕打が、例の兄にはまたすこぶる気に入らなかった。些細な事から兄はよく機嫌を悪くした。そうして明るい家の中に陰気な空気を漲ぎらした。母は眉をひそめて、「また一郎の病気が始まったよ」と自分に時々私語いた。自分は母から腹心の郎党として取扱われるのが嬉しさに、「癖なんだから、放っておおきなさい」ぐらい云って澄ましていた時代もあった。兄の性質が気むずかしいばかりでなく、大小となく影でこそこそ何かやられるのを忌む正義の念から出るのだという事を後から知って以来、自分は彼に対してこんな軽薄な批評を加えるのを恥ずるようになった。