Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

とお兼さんは愛嬌に云ってくれた。自分が鞄の中へ浴衣や三尺帯を詰めに二階へ上りかける下から、「是非そうなさいましよ」とおっかけるように留めた。それでも気がすまなかったと見えて、自分が鞄の始末をした頃、上り口へ顔を出して、「おやもう御荷物の仕度をなすったんですか。じゃ御茶でも入れますから、御緩くりどうぞ」と降りて行った。

自分は胡坐のまま旅行案内をひろげた。そうして胸の中でかれこれと時間の都合を考えた。その都合がなかなか旨く行かないので、仰向になってしばらく寝て見た。すると三沢といっしょに歩く時の愉快がいろいろに想像された。富士を須走口へ降りる時、滑って転んで、腰にぶら下げた大きな金明水入の硝子壜を、壊したなり帯へ括りつけて歩いた彼の姿扮などが眼に浮んだ。ところへまた梯子段を踏むお兼さんの足音がしたので、自分は急に起き直った。

お兼さんは立ちながら、「まあ好かった」と一息吐いたように云って、すぐ自分の前に坐った。そうして三沢から今届いた手紙を自分に渡した。自分はすぐ封を開いて見た。

「とうとう御着になりましたか」

自分はちょっとお兼さんに答える勇気を失った。