Classici giapponesi con furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Leggi 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.416 caratteri · 53 schermate
佐八の眼は一点で停った。
「来なくってもいい」と佐八はまたはっきりした声で云った、「もうすぐにおれもいく、もうまもなくだからな、ああ、そうだとも、もうそんなに待たせやあしないよ」
彼は微笑しながら、そこにその人がいるかのように、やさしく頷いて、そしてまた眼をつむった。治兵衛は登の顔を見た。
「うわごとだ」と登は云った。
「死ぬ病人はよくこんなふうなうわごとを云うもんです」と治兵衛が囁いた、「だが私はこれをいま死なせたくない、どんなことをしてももういちど丈夫にしてやりたい、この佐八は、まるで神か仏の生れ変りのような男だったんですよ」
私もつい四五日まえに知ったのだが、と治兵衛は腕組みをし、声をひそめて語った。
佐八が長屋の人たちのために、稼いだものを惜しげもなく遣っている、ということはまえにも聞いた。自分はまるで着る物も着ない、酒はもちろん煙草も吸わず、食う物さえ詰められるだけ詰め、そうして余しただけを全部、隣り近所の困っている家族に貢いだ。――この事実は長いことわからずにいた。このむじな長屋のような、極貧者の集まるところでは、長く定住する者は稀で、三年も経つとすっかり顔ぶれが変ってしまうくらいである。