Classici giapponesi con furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate
黒い背広をどことなしタクシードのような感じに着こなして、ほんとに三重にたたまってたれている顎を七面鳥の肉髯のようにふるわしながら流暢な日本語で話すクラウデの風は、そのみがきのかかり工合といい、いかにも花柳界に馴れた外国人の感じだった。その席でそういう印象を受けたぎり、人づき合いのせまい伸子は、いつクラウデがロシアへかえったのかもしらなかった。
ところが、伸子がこっちへ来てから間もないある晩、芸術座の廊下で声をかけた男があった。それがクラウデであった。三重にたたまっておもく垂れた顎をふるわしてものをいうところは元のままであったが、そのときのクラウデには、東京で逢ったときの、あの居心地わるいほどつるつるした艷はなくなっていた。彼の着ている背広もあたりまえの背広に見えた。クラウデはまた日本文学の夕べにも来ていた。そして、いま、またこのサヴォイ・ホテルの廊下で出あったのだった。クラウデは、愛嬌のいい調子で、
「モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の冬、いかがですか」
と云った。
「あなたのホテルは煖房設備よろしいですか」
「ええ、ありがとう。わたしは、冬はすきですし、スティームも大体工合ようございます。