Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate

Aozora Bunko

十四

伸子は蜂谷の顔をさけ、ときには、手で蜂谷の顔を柔かくおしのけながら、自分の顔をそむけたり、暫くの間離れて歩いたりした。蜂谷良作はそういうとき、伸子を名でよんだり姓でよんだりした。

「あんまり無理だ。いっぺんきりなんて――それなら、僕がはじめて接吻したとき、どうして君は、自分からしかえしたんだろう」

あの夜の瞬間の感情の激発を伸子は蜂谷にどうわからせることができただろう。伸子さんは、接吻のしようもしらない! そのひとことがあれほどひどく伸子をさしつらぬき、そのために伸子は火花になって蜂谷の唇をとらえた。蜂谷に向ってほとんどとびかかったと言えるように動いたせつな、しんから傷けられ怒っていた自分の感情を伸子は忘れることができない。それは女の動物が襲ってゆくときの感情だった。あれが、接吻だと云えるだろうか。

伸子は、考えこんでいるためにふだんよりちんまりした顔つきで蜂谷を見た。

「あれは、やけどだったんだわ。だからくりかえしはないの」

「や、け、ど? そんなことを云って――」

二人がそのとき歩いていたクラマールの森と町との間にある畑道の上で、蜂谷は立ちどまった。