Classici giapponesi con furigana
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とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Leggi 遠野へ (とおのへ) di 水野 葉舟 (みずのようしゅう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 55.903 caratteri · 117 schermate
春といっても、短かい日はもう、どことなく傾いている。まだここから花巻までは七里、覚束ない、薄ら寒い心持ちが胸に映える。
馬車がここに着いて、この中継ぎの宿屋の門に立っていると、佐々木君も峠を越してちょうどこの村にはいって来た。で、同じ家の二階に上って向い合って食事をすますと、佐々木君は遅くも九時頃までには花巻に着きたいと言って、つぎの村まで人車に乗ることにした。で、今夜、約束の宿屋で落ち合うと言うことにして、別れて行った。
私は室の中で一人当てなしに、ぼつりとして花巻からくる馬車を待っていた。
家を出てから、もうまる一と月になる。旅にも倦んだ。見知らぬ人の顔ばかり見て、自分とはまったく関係のない人の中に身をおいて来た心安さと、寂しさとにももう飽きた。はじめて見た自然に対する好奇心はなおさら早く消え去った。私は空虚のような心でもってぼつりとしているようだ。今はなおさら、そう思われる。そして、一種の捕え難い哀しさが心に薄く雲がかかるようになっている。
私は何にも思うのが嫌いだ。今日の前途の不安心ということもあるが、それよりも今自分の目にぱっと心が引くような色彩がない。