Classici giapponesi con furigana
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とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Leggi 遠野へ (とおのへ) di 水野 葉舟 (みずのようしゅう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 55.903 caratteri · 117 schermate
月見草
馬車が深い渓流に沿った懸崖の上を走っていた。はるかの底の方に水の音がする。崖の地肌には雪に、灰色の曇った空がうつって、どことなく薄黒い。疎林がその崖に死んだように立っている。
その中に、馬車の轍の跡だけが、泥に染んでいる。私はいま、東北の或る田舎を旅をしているのだが、この地方では、三月の半ば過ぎていると言うのに、まだ空は雪催いだ。
私は馬車の窓に倚りかかって、この目馴れない景色を見いっていた。道には人気も無かった。
馬車の中でも、もう皆くたびれていると見えて、誰も口を噤んでいた。ただ馬車が、危い道を揺り上げ、揺り上げ駆けていた。
私は目も疲れた。――からだは今朝から長いあいだ、窮屈な態をしているので、方々が痛い。――その疲れた目を、力なく後に残り続いて行く道の上に落とした。見るとなしに道が目にはいっていた。
すると、その道の両側に、ごまの実そっくりな形をした、実がはじけてついている草の枯れたのが、つづいて立っているのを見た。「やまごま」、そんな名の草のあることを聞いたように覚えている、この珍らしい雪国に来たのだ。或いはその草かもしれぬと、私は故もなく思った。