Classici giapponesi con furigana
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とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Leggi 遠野へ (とおのへ) di 水野 葉舟 (みずのようしゅう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 55.903 caratteri · 117 schermate
そして気でもまぎらし給え。」
と言うと、荻原はむっつりして、やはり沈んでいたが、私が促すのでいきおいのなさそうに立ち上ってそれから神楽坂の通りの方に出た。
曇って、雲が低く、空は真暗だ。町の中をときどき、砂を巻き上げて、風が吹いて通る。しかし、その位なことで賑やかな神楽坂の通りは、燈火一つ少くなりはしない。夕方帰りの人や、買物の人や、まだひどく寒くはないから気楽な散歩の人もちらほら見受けられる。
両側の店の燈火はまだまだ、淋しいなどという心持ちは少しもない。
近所の寄席では、楽隊が上調子な譜をやっている。……私達はそこの角までくると、なんと思ったか、荻原は往来の角に突っ立って、黙って町の賑やかさを眺めている。私は横から、
「おい!」
と声を掛けたが、荻原は返事もしないで、やはり突っ立っている。
それを見ると、私はひどく感に打たれた。丈の高い、茫とした、この賑やかな、はしゃいだ調子とは、まるで心臓の鼓動が調和しない男が、悲しそうな顔、むしゃくしゃした顔をして傍観している。
傍観者! 不調和!――この言葉だけでも悲しむべき運命の暗示がある。
三