Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
……あたし、着のみ着のままなのよ。これをぬいでしまったら、それでおしまいなの。……みなあたしが悪いんですわ。久我が馬鹿な使いかたをするのを、いい気になって手伝っていたようなもんだから……」
乾は勿体らしく首をふって、
「へえ、それほどまでとは知らなかった。……野放図な亭主に連れ添うばっかりに、あんたも苦労するねえ。(と、いって額を睨むようにしてなにか考えていたが、やがて、突然に)よろしい、用達てましょう。……だが、断っておくが、これは久我さんに貸すんじゃないよ。あんたに貸すのだ。あんまりあんたが気の毒だから……。そのかわり、といっちゃなんだが、じつは、あたしのほうにもすこし頼みがあるんだ。……というのは、近々久我さんのところへ、山瀬順太郎という、軍人のような体格をした男がたずねてくる。……六尺ちかい大男で、陽に焼けたまっ黒な顔をしている。一眼見てそれとわかる男なんだが、あたしあその男に、去年の秋二百円ほど金を貸してある。……そいつは最近おやじの遺産を相続して、このごろはだいぶ羽ぶりをきかして遊んでるという噂なんです。本来なら、角樽の一挺もさげて、まっさきにお礼にやってこなくちゃならねえところなんだが、逃げ廻るてえその了見が太いから、ひとつとっつかまえて油をしぼってやろうと思うんです。