Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
鶴はあれこれと食物の世話をやき、たくさん、たくさん食べてちょうだい、と、まるで祷るように、いくども幾度もくりかえすのだった。久我が食べはじめると、こんどは両手で顎を支えながら、その顔を穴のあくほど見つめていた。やがて、藪から棒にいった。
「東京からどこかへ行ってしまってちょうだい。どこでもいいから、早く逃げてちょうだい。お願いだから」
箸をやすめると、すこし顔をひきしめて、
「なぜ逃げなきゃならないの?」
「あとでわかるから……穂高はだめ。上海か青島か、なるだけ遠いところへ……」
「穂高? どうしてそんな事を……」
「だから、毎日あとを尾行てるって言ってるじゃないの。……(手提のなかから白い分厚な封筒をとりだすと、それを久我のほうへ押しやって)このなかに三百円はいってるんだ。だから、これを……」
それをおし戻して、
「こんな世話になるわけはない」
「でも、借りるあてがないのでしょう」
「大丈夫……すぐ、手にはいる」
「じゃ、逃げてくれる?」
「逃げるなんてことはしない。少し旅行したくなっただけだ」
「いつ?」
「あす……、はやければ今晩」
ながい溜息をついて、
「安心したわ。