Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
ほうぼうの部屋からしきりに水の流れる音がきこえてきた。葵は眼をとじた。
〈世界中の水を使っても、もう自分の穢れを洗い浄めることはできない……〉
だが、穢れるというのはいったいなんのことだろう。よく考えてみたいと思うのだが、頭のなかが空虚になってなにも考えられなかった。肉体にのこっているすこしばかりの痛みのほうが、なにか切実に感じられるのだった。静かな夕暮れだった。
部屋のなかに人のけはいがする。はっとして眼をあけて見ると、戸口に朱砂ハナが立っていた。紫紺の羅に白博多の帯という、ひどく小粋ななりをしていた。戸口に立ったまま葵のほうを眺めていたが、すらすらと寄ってくると、
「おや、どうなすったの。気分でも悪いんですか」
ひとがちがうような優しい声でいいながらじろじろと葵の身体を見まわした。葵はなにもかも見すかされるような気がして、思わず身体を起した。
「なんでもないの。すこし疲れたから……」
「そう。……でも、たいへんな顔色よ。お冷でもあげましょう」
といって、立ってゆくと、そこここと仔細らしく流し元をのぞきこんでから、コップに水を汲んで戻ってきた。葵により添うようにしてかけると、しみじみとした調子で、