Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
久我は決して遠いところにいるのではない。永劫のかたちでいまもあたしを抱擁していてくれるのだ。
思えばはかない縁だった。はじめて久我と逢ってからまだ四月にも足らないのに、ひとりはもう空へかえり、ひとりは汚濁雑爼のなかへのこされた。現世につながる諸情諸因縁はみなこのようにも短かく果ないが、空へかえればそこに玲瓏たる永生が自分を待ちうけていてくれるのであろう。久我のいない世界に執着などのあるべきはずはない。
葵は空に手をのばすと、低い声でいった。
「……待っててちょうだい。いますぐ……」
翌朝、監房監守が点検にゆくと、東側八号室の女は細紐で固く喉をしめて縊死をとげていた。ちょっと胸にさわって、もう絶命しているのを見てとると、靴音高く混凝土の廊下を走り去った。
こんな幸福そうな死顔ってあるものだろうか。唇のはしをすこし曲げ、まるで笑いをこらえているようなあどけない顔つきをしていた。のぼりかけた朝日が、その横顔を桃色に染める……