Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
それを飛びこえたり、足の先で押しのけたりしながら、机のそばまでゆくと、乾は思いだしたように懐から夕刊をとりだして、拾い読みをはじめた。
絲満事件の五日ほど前に起った銀行ギャングの犯人の一人が、けさ名古屋で捕ったというので、全市の夕刊の三面はこの事件の報道で痙攣を起していた。犯人の自供によって、事件の全貌が明らかになろうとしている。警視庁高等課の予想通り、思想関係者の仕業だったのである。
さすがの絲満事件も、この激発のためにはねだされて、甚だ影のうすい存在になってしまった。夕刊には古田子之作が証拠不充分で今朝釈放された、という記事が、申訳のように十行ばかり載っているだけだった。
乾は眉をよせてしばらく考えこむ。それから、いまいましそうに舌打ちすると、夕刊を小さく折りひしいで、濡れた羽織といっしょに寝台の上に投げだした。
風が強くなって、鎧扉のすきまから雨がふきこんできた。乾は、ガラス窓をしめ、重そうなカーテンをひくと、どっかりと椅子の上へあぐらをかいた。机の抽斗から大きな紙挾みを出す。夥だしい新聞の切抜きのなかから四五枚の写真をえらびだすと、一枚ずつ丁寧に机の上に並べ、頬杖をつきながら一種冷酷な眼つきでそれを睨めまわしはじめた。