Classici giapponesi con furigana
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ぎんさんじゅうまい
銀三十枚
国枝 史郎
Leggi 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 35.863 caratteri · 73 schermate
車内は桃色に明るかった。柔かいクッション、馨しい香水、二人はきっと幸福なんだろう。顔を突き合わせて話していた。一瞬の間に過ぎ去った。月光が車葢に滴っていた。タラタラと露が垂れそうだった。都会の空は赤かった。その方から警笛が聞こえてきた。
「もういい」と私は自分へ云った。
最後の一突きが来たからであった。花壇を越して林があった。目掛けて置いた林であった。私はその中へ分け入った。
「ユダも縊れて死んだはずだ」
木を選ばなければならなかった。木はみんな若かった。一本の木へ手を掛けた。幹へ額を押し付けた。ひやひやとして冷たかった。そうして大変滑らかだった。シーンと心が静まった。平和が心へ返って来た。
「脆そうな木だ。折れるかもしれない」
もう一本の木へ手を触れた。
その時私へ障るものがあった。誰かが肩を抑えたのであった。
私は静かに振り返った。
一人の男が立っていた。
鳥打を頭に載っけていた。足に雪駄をつっかけていた。
私はもっと壮健の頃、新聞記者をしたことがあった。
この男は刑事だな。私は直覚することが出来た。
「どうしたね?」とその男が云った。
「…………」
「黙っていては解らない」