Classici giapponesi con furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Leggi 鎧櫃の血 (うし) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.702 caratteri · 99 schermate
家内の者はみな隠れてしまって、その男ひとりがそこに立っていた。
治三郎は水を貰って飲んだ。それから飯を食わせてくれと頼むと、男は飯に梅干を添えて持ち出した。彼は恐れるように始終無言であった。
「泊めてはくれないか。」
「お願いでございますから、どうぞお立退きを……。」と、彼は嘆願するように言った。
「詮議がきびしいか。」
「さきほども五、六人、お見廻りにお出でになりました。」
「そうか。」
上野から来たか、千住から来たか、落武者捜索の手が案外に早く廻っているのに、治三郎はおどろかされた。ここの家で自分を追っ払おうというのも、それがためであると覚った。
「では、ほかへ行ってみよう。」
「どうぞお願い申します。」
追い出すように送られて、治三郎は表へ出ると、雨はまだ降りつづいている。飯を食って休息して飢えと疲れはいささか救われたが、さて、これから何処へゆくか、彼は雨のなかに突っ立って思案した。
捜索の手がもう廻っているようでは、ここらにうかうかしてはいられない。どこの家でも素直に隠まってくれそうもない。どうしたものかと考えながら、田圃路をたどって行くうちに、彼はふと思いついた。