Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Leggi 鎧櫃の血 (うし) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.702 caratteri · 99 schermate

Aozora Bunko

虎

上

「去年は牛のお話をうかがいましたが、ことしの暮は虎のお話をうかがいに出ました。」と、青年は言う。

「そう、そう。去年の暮には牛の話をしたことがある。」と、老人はうなずく。「一年は早いものだ。そこで今年の暮は虎の話……。なるほど来年は寅年というわけで、相変らず干支にちなんだ話を聴かせろというのか。いつも言うようだが、若い人は案外に古いね。しかしまあ折角だから、その干支にちなんだところを何か話す事にしようか。」

「どうぞ願います。この前の牛のように、なるべく江戸時代の話を……。」

「そうなると、ちっとむずかしい。」と、老人は顔をしかめる。「これが明治時代ならば、浅草の花屋敷にも虎はいる。だが、江戸時代となると、虎の姿はどこにも見付からない。有名な岸駒の虎だって画で見るばかりだ。芝居には国姓爺の虎狩もあるが、これも縫いぐるみをかぶった人間で、ほん物の虎とは縁が遠い。そんなわけだから、世界を江戸に取って虎の話をしろというのは、俗にいう『無いもの喰おう』のたぐいで、まことに無理な注文だ。」

「しかしあなたは物識りですから、何かめずらしいお話がありそうなもんですね。