Classici giapponesi con furigana
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がん
雁
田中 貢太郎
Leggi 雁 (がん) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3848 caratteri · 8 schermate
よしなき慾心を起したばかりに、女を売った血の出るような金を無くしてしまった。愚かな農夫は声をだして泣いた。
陽が落ちて風が寒くなった。久兵衛は力ない足を引摺って在所の方へ帰って来たが、我が家が近くなるに従って其の足が重くなって来た。彼は平生口やかましい女房の顔を見るのも苦しかったが、それよりも苦しいのは三日の後に差し迫っている年貢の期限であった。可愛い女を売る程であるから、彼は他に金をこしらえる手段はなかった。……額の抜けあがった顔がふと眼前に浮んで来た。それは年貢の催促に来る名主の顔であった。それは、
「其の日までに出来なければ、いよいよ牢屋へ往かねばならんぞ」と云った時の顔であった。それを聞いて飯盛女にと進んで往った女の身の代金は、ちょっとした口腹の慾のために無くしてしまった。何と云ってももう金は帰って来ない。
久兵衛は暗い藪陰の路を通って我が家へ帰って来た。
「……戻ったの、遅かったから心配しておった、都合が好かったの」と、地炉の前にいた女房が庭の方を見て云った。
久兵衛は黙って頷いて見せた。女房は其の顔に眼をとめた。
「どうかしたの」
久兵衛は何か口の裏で云いながら、切れた草鞋を解いてやっと上にあがり、女房のむこうに崩れるように坐った。