Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.621 caratteri · 25 schermate
「やい、櫓杭をまわせ、あの船に寄っちゃなンねえ」
「へッ、精霊船か」
「もそっと悪りいやい、あの船印を見ろ」
あからひく朝日がのぼりかけ、むこうの船の大帆がパッと紅に染まる。むきの加減で矢帆に隠れて見えなかったが、こんどはまっこうに見える。……艫の一番かんぬきのところに立っている白黒二両引の大吹流し。――遠島船の船印だ。
「やア、遠島船だ」
「畜生、縁起でもねえ」
「寄るんじゃねえ、寄るんじゃねえ」
「平吉めら、どこに眼のくり玉をくっつけていやがる。あの船印が見えなかったのか」
「そういう手前らだって……」
「やい、船をまわせ」
「返すんだ、返すんだ」
今まではずんでいたのが、急に気を悪くしてあわてて舳をまわす。
鰹船の禁物は第一は遠島船。第二が讃岐の藍玉船。遠島船にあうと鰹の群来が沖へ流れるといって、たいへんに嫌う。藍のほうはむかしから魚には禁物。魚にあたったら染藍を煎じて飲めというくらいのもの。このふたつは精霊船よりも恐い。
むさんに櫓を切って船を返そうとすると、船頭の喜三次が、このとき始めて声をあげた。
「待て待て、船をつけろ」
「えッ」
「船をつけろと言ってる」