Classici giapponesi con furigana
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こうすいしんし
香水紳士
大阪 圭吉
Leggi 香水紳士 (こうすいしんし) di 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7752 caratteri · 16 schermate
ふと、クルミさんは、云いしれぬ恐しさの中から、なんともいえない口惜しさが、こみあげて来るのを覚えた。
考えてみれば、大変なことになってしまった。折角の楽しい旅行が、お蔭で滅茶々々になってしまった。たださえ、知らない大人の人との同席なぞ、あまり歓迎したくなかった今日の旅行に、こともあろうに恐しい盗賊紳士の乗合わすなぞとは! ふとまた、クルミさんは、別の考えにとらわれる。
――いま、この客車の中に、このように恐しい紳士が乗っていることなぞ、誰も知らないのだ。あたしだけが知っている。このまま知らぬ顔をして、国府津で降りてしまっていいものだろうか?
――しかし、それかと云って、どうして、自分のような少女の身で、こんなにふるえているような臆病さで、このことを人に知らせることなぞ出来ようか?
遠く、松原の向うに、見覚えのある国府津の山が見えだした。
「そうだ、もう、そろそろ荷物を下して置かなければならない」
急に我に返ると、クルミさんは、思い切って、静かに立ちあがった。手足がガタガタふるえている。まるで夢の中のしぐさのように、中々網棚の風呂敷包みが下せない。