Classici giapponesi con furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Leggi 魔都 (まと) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 293.999 caratteri · 578 schermate
屋根の棟から忍返しを越えて右足をまず地袋の棚の上へ置く。右手は窓の框に引っ掛けて躰を支え、少し躰を浮かせるようにして左足を地袋の上へ引き込む。そこで音を立てずに畳の上へ降りようとするには、左手は自然に伸びてそこの柱の方へ伸び、左手で柱に掴まりながら静かに畳の上へ足を降すことになる。三本の指の跡は柱に掴まった時に印されるべき筈なのである。
真名古は忍返しを越えて屋根の上へ出る。大して時間もとらずにまたすぐ戻って来た。屋根瓦の上を這い廻った手先が真ッ黒になった。それは、すぐ背中合せの、小田原町二丁目の横通りに高い銭湯の煙突が立っていて、風の具合でその煤がこの屋根の上へ落ちるからである。三本の指の跡も自然にこれで解決される。指紋をとって見ればそれがだれであるか、その方も容易に解決されよう。その指の跡は静かに畳の上へ降りるために付いたのではなくて、屋根を通ってこの部屋へ帰って来た男が、地袋の上で靴下を脱ぐために、左手で柱に体を支えたのだということがわかった。地袋の板の上に微かに薄黒い丸い跡が残っていて、それが煤のついた靴下の踵のあとだと見てとられるが、左足の跡だけで右足の方は見当らないからである。