Classici giapponesi con furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Leggi 魔都 (まと) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 293.999 caratteri · 578 schermate
どうか一通りおききなすって下さいまし」
急に床の埃の中に両手をつき、思い迫ったように、烈しく身悶えをしながら啜りあげて泣いていたが、やがて手の甲で無器用に涙を払うと、床に両手をついたまま、縋りつくような眼付で、寅造の顔を見上げながら、
「親分、御存じの通り、わたくしには、長太郎という今年六つになる一粒種の伜がございます。そいつがこの夏、ふとしたことから消化不良とかいう病気になり、まるっきり湯も水も受けつけねえ。なにしろ、土用の最中に米粒一つ通さねえのだから、日増しに痩せ衰えてもう骨と皮ばかり、医者もとうに匙を投げて、これはどうでも助からねえという。これがチブス、コレラという病気なら諦めようもありましょうが、ものが喰えねえで死ぬなんてえ馬鹿な話はねえ。てめえの命よりも愛しく思うたった一人の伜が、こんなつまらねえ病気で死んで行く。それを手も足も出ねえでじッと見ているわたくしの辛さはまあどんなでござんしたでしょう。あなたも子供の父親でおあんなさるから、その時の切なさ遣瀬なさを多分お察し下さるでしょう。生れてからまだ一度も合わせたことのねえ手を合わせ、この子の代りにわたしの命をとってくれと、神も仏も一緒くたに、気狂いのように祈っても、だんだん果敢なくなるばかり。