Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
雪渓は、完全ならたどるに楽だが、ここらではなかなかそうは行かぬ。割れ落ちて通れない所は、山側へ移っては搦むことになる。その雪と岩壁の接触点も、往々パックリと巨口を開いて、この大白蛇は、いかつい鱗を刻んだ数丈の脇腹を、底しれぬ闇の中に浸している。その青闇には、おずおずした人間の足を、ずるり引き込もうとする、陰性の魔気が棲んでいるかのようだ。
劔の大窓雪渓の挿図
雪渓が一方は劔の大窓、一方は劔沢界いの尾根へと、二た筋に岐れる地点、その山鼻に小屋場がある。ここに私たちは十日ばかり滞留した。『大窓』とは、うまい名をつけたものだ。このどこを見ても山が覆いかぶさって来るような、厳重な目隠しを施した形の迷路の奥に、ただこの谷の上部だけが、ガクリとU字形にくり抜かれて、貴い天上の光りを導いてくれる。まったく窓にちがいない。その窓の下から、この本谷目がけて足もとまで、ただ一条の雪の急流――むしろ瀑布だ。それが窓にさしこむ高空の光りを反射するから、谷は深いのみならず、またはなはだ高い感がする。
この大窓雪渓の両壁は、惨忍に皮肉を掻き取られ、えぐり取られ、むしり取られて、血まみれになったというふうな、山の骸骨の曝し場だ。