Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
仙人谷の末は、半開きの末広なりに開け、黒部の本谷をへだてて、大蓮華つづき、祖父谷の源頭あたりか、厚い雲の垂れ幕に半ば隠れて、昔紫にふかぶかと横たわっている。雪もものうく、瞼を合わせているらしい。天頂はただ、雨をふくんだむら雲の、暗み明るむわだつみで、その波しぶきが、時にハラハラと散りかかる。
湯の流れは絶えず浴槽へそそいで、徐かに、温かに、そして滑らかに全身の肌をなでては、又岩間へと、優しい音を残して姿をかくす。絶えず、実に絶えず――どんな不可測の深みから、どんな不可知の道を通って、ここへは湧いてくるのであろう。この広大無限なるものの片鱗! すべて、まったく四周のすべてが声をひそめて、きわめて静かだ。しかも粛々として、物の進行、輪廻するけはいがある。ささやかな鼓動を打つ、自分の生身も、いつかその中へ融合せられ終って……。
行儀よく五体が、湯槽の中に蔵められたところは、そぞろに古代埃及の木乃伊を思い起させる。こうした長い浴湯からあがって、からだを拭えば、――奇やしや総身の皮膚が、キラキラと銀光を放つではないか。思わず手をとどめて、まじまじと見とれてしまう……神か仏の御像ででもあるような。