Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
九 鐘釣温泉
九 鐘釣温泉――その二、夏から秋にかけて
こうした厳しい山間で落ち着ける処は、やはり温泉に越すものはあるまい。この大地の至深から地表に湧き出る、熱い不思議な流動体の手で、人間は「まるごと」赤児のように、自然に抱きとられる。温泉の使命は、自然の博大甚深なる愛の、その涙もろい一面を、ありのまま眼前に流露させるところに存する。彼はかくて長い暗黒の旅を経て、ここにその恵み深い姿を現わしているのだ。温泉は人にはいられねばならぬし、人は温泉にはいらねばならない。
祖母谷温泉が無人の境になってから、この鐘釣が、黒部谷では人のまいる温泉の奥之院になっている。その資格は充分にある。浴客の多くは、さすがけわしい長道中に僻易して、少し谷の奥過ぎると思うらしいし、清純な自然の姿に慕いよる登山の客は、も少し上流にあったら……などとも思う。しかしこの辺が、まず調和のとれたところだろう。それだけに、深山の気と塵界の匂いとが、奇妙に交り合っている。位置は谷の中流、黒部大峡谷の中心に近い地点にあるのに、海抜高距は僅か四百メートルそこそこに過ぎない。――いかに谷の底深いかが解ろう。