Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate

Aozora Bunko

そうかと思えば、若い男で、早瀬の中に聳え立つ、見あげるばかりの大岩へ登って、逆立ちなど演じるのもある。熱せられた赤裸々の肉体から発散する、人間の気息が、湯の温気に溶け込んで、渦巻いて、この冷峭寂寥の大峡谷の一隅を、異様に濃厚にとざしている。

運動する肉体の美しさ。およそ人体が現わす麗わしさ、和らかさは、こうした四周の厳酷なる風物を背景として、ひときわ鮮やかに躍動するのだ。そして、その肉体を動かす心!人生の幸、不幸、喜劇、悲劇は、この濃密な湯気の綾の目にも、その一端をチラリとのぞかす。それをたぐって行こうなら、どんな秘境に導かれるか、とても想像も及ぶまい。そして目を外らせば……それは立ち迷う湯の煙と共に、どことも知れぬ虚空の一角へ、放散し去るばかりであろう。

湯に浸かる母子の挿図

夜は、晴れれば、細長い空に銀河が流れる。むしろ空全体が、銀河のようなものだ。昼間の谷川が、暮れると共に、天に移った形だ。黒い山の端を射抜いて、光りを飛ばす星もある。織女、牽牛は、天上の川と地上の流れの間をさまよい、谷の末には北極星が、厳として動かない。月の晩はまたいい。山も谷も、光りと陰で、だんだらの大滝縞に染めあげられる。